日本画は、岩絵の具を膠というゼラチン質で定着させて描くもの。
これこそが「日本画」の定義だと、私は思っています。

昨年秋に、お世話になっている日本橋の有便堂で、ある業者さんが製造を辞めるから、三千本膠がお買い得だよ、と言われて、珍しく3束買いました。
その時は、たかが一業者の話だと高をくくっていました。
まさかその後、「日本から三千本膠が消えてなくなる!」になるとは思ってもいませんでした。
なんでも後継者がいなくなったそうです。
日本中の三千本膠を、そのご老人一人が作っていたことに、まず驚きました。
2年前に日本画に戻り、合成膠やメディウムに手を出したりしましたが、どうも使い勝手が悪く、結局、三千本膠に戻ってきました。
いちいち溶いて、夏は腐るし、冬は固まるし、濃度も徐々に薄くしなきゃだし、面倒くさいことだらけだけど、その七面倒くささが、絵に対する情念や愛着を産むのだと思う。
そういう目に見えない所に作家の精神が宿るのが、日本画の良さだと思うのだ。
画材屋さん「粒膠を代用してください」とか、簡単に言うなっつーの。
似て非なるものなんだから。
日本文化の継承を揺るがすこの一大事に、誰か後継者に名乗りをあげる人はいないのか?なんなら私が!
と居ても立ってもいられない心境でしたが、どうもこの問題、社会的な背景もあるそうで、簡単にはいかないようです。
とにかく私の手持ちの膠がなくなると思われる2年後までに、どうか素材研究の方々、開発をばお願いします!